療育での作業療法士の役割【ごーやが大切にしてること】

ごーや
僕は、病院で働く作業療法士です。
ギズモパパ
えっ?作業療法士?何それ?
ごーや
主に発達障害をもつお子さんと一緒にリハビリをしています。といっても、作業療法士は他にもいろんな場所で働いているんですよ。
ギズモパパ
へ~そうなんや!?あんまり聞いたことないなぁ。言葉の遅れとかがある子にリハビリしたりする人と違うの?
ごーや
言葉のリハビリをする職種は、言語聴覚士って言って、また違う職種なんですよ。
ギズモパパ
そうなんや~。普段あんまり関わらないから知らんな~。でっ!何してくれる人なの?
という具合に、僕が作業療法士として、発達障害のお子さんと関わるようになった10年ほど前は、先ほどみたいな会話がよく聞かれました。
ここ最近では少しずつ認知もされてきている印象ですが、もっと作業療法士のことを知ってもらえると良いかと思い自分なりの主観が多いですが、まとめてみました。
では、いってみましょう!

この記事でわかること

  • 作業療法について少し理解できる
  • 特に発達障害の子どもに関わる作業療法士の仕事内容がわかる(僕の主観多め)
  • 対象となる子がわかる
  • 具体的にどんなことをするのか少しイメージがつく

作業療法ってなに?

まず最初にここが一番の疑問ですよね。

作業療法っていうのは、「occupational therapy」って英語で言うんですが、略して「OT」(以下OTしていきます。)さん言われることが多いです。

リハビリの世界でも有名なのは、理学療法士(PT)さんをよく聞きますかね。発達障害領域では、言葉の遅れなどのリハビリで活躍している、言語聴覚士(ST)さんもいます。

STさんもまだまだマイナーではありますが、すごく重要なお仕事だと思っています。OTもまだまだマイナーな仕事なので、これから皆さんに知っていただけると嬉しいです。

さて、作業療法の定義ってやつですが、最近改定されたようです。内容はこんな感じ、

日本作業療法士協会の作業療法定義」よれば、

作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。

(註釈)
・作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる。
・作業療法の対象となる人々とは、身体、精神、発達、高齢期の障害や、環境への不適応により、日々の作業に困難が生じている、またはそれが予測される人や集団を指す。
・作業には、日常生活活動、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流、休養など、人が営む生活行為と、それを行うのに必要な心身の活動が含まれる。
・作業には、人々ができるようになりたいこと、できる必要があること、できることが期待されていることなど、個別的な目的や価値が含まれる。
・作業に焦点を当てた実践には、心身機能の回復、維持、あるいは低下を予防する手段としての作業の利用と、その作業自体を練習し、できるようにしていくという目的としての作業の利用、およびこれらを達成するための環境への働きかけが含まれる。

上記のようになっています。

以前の定義だと、発達障害のある方達に対する明記はなかったのですが、昨今、発達障害領域で働くOTさんが増えたこともあり、この明記はすごく嬉しいことですね。

簡単に言うと「人が行うすべての活動(作業)が対象で、その人が自立、幸せになるために必要な活動に対して直接的な働きかけや周りの環境に対してアプローチしていく役割」だと僕は思っています。

発達障害領域の作業療法の役割

ここからは割と自分自身の考えが多いですが、お話していきますね。

対象

まず、発達障害領域で働く僕の病院の場合以下のお子さん達が対象になることが多いです。

  • 自閉症スペクトラム(ASD)
  • AD/HD
  • 運動発達遅滞
  • 発達性協調運動障害

などのお子さんがメインになってきている印象です。

病院によっては、脳性麻痺のお子さんや、筋ジストロフィーのお子さんの作業療法もしているところもあるので、一概に決めつけることはできませんが、僕の病院では上記のお子さんが多く通っていますし、受け入れるかどうかは、お医者さん次第なところもあります。

特に筋ジストロフィーや他の進行性の病気があるお子さんの場合、運動機能や言葉の機能を伸ばすだけでなくて、他の病気(心疾患、呼吸管理)の管理もできなくてはいけないので、なかなか僕自身も経験がないところもあります。

目的

ここも、各施設によって違うのですが、

  • 運動発達の促進・向上
  • 日常生活動作(着替え、食事、トイレなど)の獲得・向上
  • 日常生活に関連する、手先の運動能力の促進・向上
  • 各協調運動(例えば、なわとび、鉄棒、ボール遊び)などの向上
  • コミュニケーション能力の向上

などを目的に関わることが多いです。

OTは、人間のやっていることが対象になるので、こういった活動に関わることが多くなりますね。

しかし、最後にあげたように、コミュニケーション能力への対応も作業療法での目的として大切なことではないかと僕は考えています。そもそも、このコミュニケーション能力が安定していないと、なにか新しいことや動作を覚える、練習する時にこちらの援助を受け入れることができないので、スムーズに獲得できるものも、時間がかかってしまうこともあったりします。

受け入れができない子が悪いわけではなく、こちらの対応次第な部分も多いので、僕自身のスキルを磨く必要も多分にあるかなって思いますね(^_^;)

具体的にはどんなことするの?

じゃあ、具体的にどんなことをするの?って思う人が多いかなって思うので、簡単に説明しますね。

使う物はわりとなんでも良いんですが、僕のところでは手作りの課題を使っていることが多かったり、100均とかで売ってる道具を使って練習することが多いです。例えば、

  • 洗濯ばさみを使った手先の力をつける活動
  • ペットボトルの蓋で作ったものを、穴の開いたカップに入れる活動
  • ビーズなどを紐に通す活動
  • 手作りのボタンはめでの活動
  • 細い棒を入れる活動
  • 市販のお箸を使った練習
  • 手作りの塗り絵課題などでの練習
  • 一緒に工作
  • 手作りの的に玉を当てて倒す活動
  • 風船を使った活動

など、他にもいろんな活動をしているんですけど、結構、手作りのものが多いし、家でもできそうな活動をしていることが多いですよ。

ただ、簡単な活動でも集団ではうまくできなかったり、教え方に工夫が必要な子が多いので、個別で関わる中で活動を進めることが多くなります。

あと、特殊な活動となると、大きなブランコや滑り台、トランポリンなどが設置してあることが多いので、特殊な形の遊具での活動をすることで、バランス練習や体幹を鍛える活動、サーキット遊びなどすることが多いですよ。

遊びやおもちゃについては、今後、少しずつ遊び方や効果などについて紹介していこうかと思うので楽しみにしていてください。

ごーやが目指す子ども像

ここまでは、一般的な作業療法についての紹介と、発達障害領域ではどんなことをしているのか説明をしてきましたが、最後は、僕自身が子どもと関わる時に大切にしていること、目標としていることをお伝えしたいと思います。

できないことがあったっていい

まず、あれができない、これができないと言われてくるお子さん達が多いのですが、僕的にはできないことがあったっていいんじゃないかなと思っています。子どもに限らずみんなそれぞれ得意、不得意をもっていますし、ある特定の部分ができないからって、その子自身が責められる理由にはなりません。

できないことばかりに目を向けるのではなく、まず、本人の得意なところにフォーカスを当てて、その得意を伸ばしてあげれるようになりたいなと思っています。

できるところを中心に、できないところだって、その子の一部なんだと思い接する気持ちは大切ではないかと思いますよ。

自分の力で生きるスキルを

できないことがあったっていいんじゃないかって言いましたが、やはり、子どもも大きくなっていき、社会の中で自立した生活が送れるようになるためには「自分の力で生きるスキル」が必要になってくると思います。

ここでいう「自分の力で生きるスキル」っていうのは、

  • 最低限のあいさつなどができること
  • 身の回りのことがだいたい自分でできること
  • 必要あれば適宜、周りの人に援助を頼むことができること

かなって思います。お金の管理や、仕事関係の管理は子どもによってはなかなかできないことが多いかなって思うので、ここでは必要スキルに入れていないです。なので、上記の3つが特に大切なスキルじゃないかなって考えています。

最低限のやりとりを

あと、特に大切なことだなぁと日々感じているのが、いろんな人とのやりとりが最低限適切にできることだと考えています。

自立した生活をしていく上で、周りの人に援助を頼むことができることが大切だとお話しましたが、やはり何をするにしても、社会との関わり、人間関係から離れることは難しいことです。

そう考えると、適切なやりとりができることっていうのは生きていく上で最重要課題になるのではと考えています。

なので、僕が療育で関わる時には、運動面の遅れや手先の不器用さ、生活動作の不器用さにも注目はしていますが、一番注目しているのは、やりとりが適切にできるかどうかという点です。

こちらの提案や指示・交渉にのって動くことができるか、必要な時に適切に援助を頼むことができるかっていうのを重要視しています。ここでいう、適切に援助を頼むというのは、言葉で言うだけではなく、カードを渡す、ジェスチャーで伝える、伝える相手の方をみて伝える、物をもってきて伝えるなど相手に伝えることができれば、どんな形でも良いと思います。

これらのスキルがあれば、新しいこともそれなりに覚えていくことができますし、できなかったとしても、必要な援助を受けながら少しずつできるようになってくることが多い印象です。

だからこそ、僕は療育で関わる時に、これらのスキルが身についているのかいないのか見るようにしています。

とにかく自分のペースで楽しんでほしい

最後に、僕は、療育にくる子どもには、いろいろと身につけてほしいスキルはあれども、最後には、自分のペース、自分らしさはもっていてほしいと思っています。

運動が遅れているから、追いつかなきゃとか、勉強ができないからダメだとか、うまく関われないからダメだっていうことはないかなって思うし、個人的には、まず本人が楽しめているかなってことが大切だと思います。やっぱりまず、自分が楽しめていないと、なにをするにも嫌になると思うし、無理して周りに合わせていると疲れてしまいますしね。自分のペースで楽しみながら、その中で、自分が必要だなとか、やらなきゃいけないなって思えることがあれば、その時に頑張っていけば良いんじゃないかなって思います。

僕は、本人のペースは守りつつ、本人にとって必要だなってタイミングを見計らって対応できるようにしています。

本人のペースって言ってるのに、泣かせちゃうこともたくさんあるんですけどねf(^ー^;

それはそれで、本人にとって必要な時期ならいいんじゃないかなって思ってます!

長文になりましたが、以上で簡単な作業療法の紹介と僕自身が大切にしていることについて書かせていただきました。

足りない点や、人によっては、ここ違うよっていうこともあるかもしれませんが、僕なりの価値観だと思って読んでいただけていたら嬉しいです。

ではでは、また~(*^o^*)